今回、タイベスト10の編集長はチェンマイへ“癒しの旅”に出かけました。
タイマッサージと並んで耳にすることの多い「チネイザン(Chi Nei Tsang)」
でも実際、それがどんな施術なのか、どんな体験が待っているのかを知る人はまだ多くありません。
古代タオ(道教)の思想をルーツに持つチネイザンは、“お腹に宿る感情をほどく”マッサージとして、
世界中のセラピストから注目を集めています。
この記事では、編集長自身がチェンマイで体験した
チネイザンの流れ・効果・施術後の変化をもとに、
「なぜ今、世界が“お腹から癒す”に注目しているのか」を紹介します。

チネイザンはチェンマイでも人気のマッサージ施術です。人気のあるお店だと2週間は予約でいっぱいというところもあったので、旅行前の予約をおすすめします。
Contents
チネイザンとは?古代タオ哲学から生まれた氣内臓マッサージ
「氣内臓(Chi Nei Tsang)」の語源と意味
「チネイザン(Chi Nei Tsang)」とは、直訳すると「氣(Chi)で内臓(Nei Tsang)を整える」という意味。
古代中国のタオ(道教)哲学を起源とし、身体と感情のバランスを整えるための腹部マッサージ療法として発展しました。
タオの教えでは、氣(エネルギー)はすべての生命の根源とされ、身体の中心である「お腹=丹田(たんでん)」に氣が宿ると考えられています。
チネイザンは、その氣の流れを整え、滞りを解くことで身体・感情・精神の調和を取り戻すことを目的としています。
お腹に宿る感情をほどく:チネイザンがもたらす心の解放


古代タオの教えでは、「感情は内臓に宿る」とされています。
怒りは肝臓に、悲しみは肺に、不安は脾臓に、恐れは腎臓に、そして喜びすぎは心臓に。
つまり、感情とは“頭の中で考えるもの”ではなく、“身体の中で感じるもの”。
長年抑えてきた怒りや悲しみは、言葉より先に内臓に沈殿します。
チネイザンはその沈殿を、優しいタッチと呼吸でほどいていくアートです。
手の温度が腹部に伝わるたび、身体が「もう抱えなくていい」と思い出す。
そのとき、涙が流れる人もいます。
それは悲しみの再生であり、心のデトックスです。
この「感情の解放」は、カウンセリングや瞑想でも届かない、身体の奥に封印された“未完了の感情”を癒す体験とも言えます。
チネイザンを実際に受けてみた in チェンマイ


今回の旅の目的地は、タイ北部の古都・チェンマイ。
友人とのリトリート旅行が決まったとき、
「チェンマイに行くなら絶対に受けてみたい」と思っていたのが、チネイザンでした。
お腹のマッサージであることは知っていましたが、正直、どんな施術なのか、どんな効果があるのかまではよく分からない。
ただ、事前に調べた口コミの中に「途中で涙が出た」「人生が変わった」という声が多く並んでいて、それが妙に心に引っかかっていました。
人気のあるお店はどこも予約が取りづらいとのことでしたが、Google Mapで評価4.8、レビューでも「彼は本物だ」と絶賛されているChi Chai Massage(チーチャイ・マッサージ)の予約を、
奇跡的に最終日に取ることができました。
セッション前には体の不調があるかどうかを聞かれました。私は夜中にご飯を食べすぎたりすると、胃酸が逆流する逆流性食道炎の症状があるので、それを話しました。
案内された部屋は、まるで別世界。
濃紺の壁、黄色いランタン、経絡図が並ぶ壁、どこか寺院のような静けさに包まれています。
まるで「瞑想ルーム」に迷い込んだような神秘的な空間でした。
施術着に着替えベッドに横たわると、タオルで目を隠されアロマの香りとともに施術がはじまりました。
目元にタオルがかけられ、温かいオイルが静かにお腹に垂らされます。
最初は軽い圧から始まり、やがて指と手のひらが蛇のようにスルスルと動き出す。
まるでお腹の上で“大蛇が舞っている”ような感覚。
動きにはリズムがあり、エネルギーが曼荼羅を描くように巡っていくのがわかりました。
最後に、胸の上に乗せられた金色のシンギングボウルの音が部屋に響きます。
「ボーン」という低い音が身体の奥に共鳴し、
全身のエネルギーが静かに整っていくのがわかりました。
その瞬間、身体と心の境界が溶け、深い静寂の中に包まれます。
セラピストからは「お腹にガスが溜まっていた」と言われました。
確かに施術後はお腹が驚くほど軽く、身体の中心が空洞になったような爽快感がありました。
不思議と強い空腹感が湧き、心は穏やかで透明。



お腹は普段あまり強く押されることがない場所なので、チネイザンは正直けっこう痛いです。でも、その痛みの中に「心地よさ」もありました。
施術中、自分の中に押し込めていた感情が静かに浮かび上がってくるのを感じました。チネイザンでは、その人が一番押さえている感情が表に出る。私自身も「何に蓋をしていたのか」に気づく不思議な体験でした。
チェンマイでチネイザンを受けられる場所リスト
この章ではGoogle Mapで口コミが良かったチェンマイのチネイザンスポットを口コミとともにご紹介します。
① Chi Chai Massage
⭐️ 評価:4.8/コメント数:約90件
💰 90分 900バーツ / ☎️ 電話予約のみ
👤 セラピスト:Chai(チネイザンの継承者クンニーに師事)
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体験記でも記しましたが、私は運良くこちらの予約が取れて行ってきました。Chaiさんの施術は素晴らしく、こちらでチネイザンを体験できてよかったと思いました。
② Chi Nei Tsang by Nareena
⭐️ 評価:5.0/コメント数:25件
💰 90分 1,500バーツ / ☎️ 電話・メール・Facebook予約可
👤 セラピスト:Nung
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こちらもFacebookで予約の連絡をしてみましたが、2週間先まで予約で一杯と言われました。施術を受けたい場合は、早めのご予約がおすすめです。
③ Tanachai Therapy
⭐️ 評価:4.8/コメント数:22件
💰 60分 600バーツ / ☎️ 電話・WhatsApp・Facebook予約可
👤 セラピスト:Tanachai
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実はこちらにも私を運びました。チーチャイさんのマッサージは流れるような手つきだったのに対し、こちらは呼吸をしながらツボに一点集中式。施術中かなり蚊に刺されたので虫除けが必須です。
④ Tao Garden Health Spa
⭐️ 評価:4.2/コメント数:208件
💰 90分 1,500バーツ / ☎️ 電話予約可(宿泊可)
🏡 マスター・マンタック・チアが設立したタオの聖地
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チェンマイ郊外のリトリート施設。チネイザンの始祖が設立したリトリートで、チネイザン以外にも様々なマッサージが受けられるようです。宿泊以外に、マッサージのためだけに訪れることもできます。
チネイザンの効果:お腹の感情をゆるめるデトックス療法


身体面:便秘・肩こり・不眠・PMS・更年期・冷え
私たちの内臓は、まるで“感情の受け皿”のように繊細です。
ストレスが続くと、無意識のうちに呼吸が浅くなり、横隔膜が固まり、血流が滞ります。
腹部に触れることで、まず感じるのは温度の回復です。
冷たかったお腹がじんわり温まり、その熱が全身に巡り出すと、自然と肩の力が抜けていきます。
・お腹がゆるみ腸が動き出す → 便秘・肌荒れが改善
・血流とホルモンバランスが整う → PMS・更年期の不調が軽減
・副交感神経が優位になる → 眠りが深くなり、不眠が和らぐ
これらの変化はすべて、身体が“守り”から“巡り”に戻るサイン。
エネルギー面:気の流れが整うと、自然と“やる気”が戻る
タオ哲学では、生命エネルギー(Chi)は常に身体の中を循環していると考えられています。
しかし、怒り・恐れ・焦りなどの感情が積もると、その流れが「詰まり」ます。
それはまるで川に堆積した泥のようなもの。
チネイザンは、腹部を通じてその滞りをほどき、
再び氣が全身に流れる“道”をつくり直す行為です。
すると、不思議なことに
「何かを始めたくなる」
「なぜか軽く動ける」
「理由もなく、笑顔になれる」
そんな変化が訪れます。
それは、氣の流れが回復したサインです。
“Motivation(やる気)”は努力でつくるものではなく、内側から湧き上がる自然現象。
チネイザンは、まさにそのスイッチを押してくれます。
セラピーを超えた「内なる浄化」の体験
チネイザンの本質は、「癒し」ではなく「浄化」。
不要な感情、滞った氣、古い思考を流し去り、
自分の“内なる空間”を取り戻す儀式のようなものです。
セラピストの手が腹部に触れる瞬間、
それは他人に癒される時間ではなく
自分の内側に“戻っていく”時間になります。
お腹がゆるむと、心が静まり、
心が静まると、世界がやさしく見え始める。
そのとき、私たちは思い出します。
「癒し」とは、与えられるものではなく、
すでに自分の中に流れているものだということを。
なぜチネイザンが注目されているのか


西洋の“マインドフルネス”では届かない、「身体からの癒し」
ここ数年、世界中でマインドフルネスや瞑想が注目されています。
けれど、心を“静めよう”とする意識そのものが、逆に「思考」を過剰に働かせてしまうことがあります。
その点、チネイザンは頭ではなく身体から心にアプローチする。
腹部。
つまり「感情の倉庫」と呼ばれる場所に直接触れることで、思考では届かない深層のストレスをゆるめ、自然にマインドの静けさへ導いてくれます。
「心を整える前に、まずお腹を整える」。
それがタオ(道教)の智慧であり、現代人が忘れかけている“下からの癒し”です。
リモートワーク・PMS・ストレス社会…現代不調への新しい処方箋
パソコンの前で一日中座り続け、息が浅くなり、内臓が冷え、感情が詰まりやすい。
そんな“現代特有の不調”が、チネイザンが再評価されている背景にあります。
とくに近年、PMS(月経前症候群)や更年期症状、慢性的な便秘、不安障害など、「医学的には問題がないのに、心身が重い」という人が増えています。
チネイザンは、腹部のやわらかな刺激を通じて
内臓の血流・リンパ・氣の流れを整え、ホルモンバランスや自律神経のリズムを回復させると考えられています。
つまり、これは単なるマッサージではなく、
“現代の気詰まり”をほどく身体心理療法でもあるのです。
「思考」ではなく「内臓」をゆるめる時代へ
心理学者たちは「感情の多くは身体に宿る」と言います。
怒りは肝臓に、悲しみは肺に、不安は脾臓に。これはタオの考え方にも通じます。
私たちは何かに悩むと、頭の中で考え続け、
「どうすればいいか」を言葉で探そうとします。
けれど本当の答えは、すでに身体の奥に沈黙しているのかもしれません。
チネイザンは、その沈黙に触れる術です。内臓の奥に溜まった“感情の残響”をやさしくほどくことで、考えすぎる癖を手放し、再び「感じて生きる」感性を取り戻すことができます。
チネイザンが人生を整える理由
お腹を整えると、不思議と人生の流れが変わります。
それは単なるリラックスではなく、「受け取る感度」が上がるから。
タオの教えでは、人間は“天地の氣”に生かされており、内臓はその氣を受け取るアンテナのような存在とされています。
内臓の滞りが取れると、人生全体の流れ、出会い・仕事・人間関係が自然に調和していきます。
チネイザンは、身体を通して人生を整えるメソッド。それは「自分の中にもう一度、氣の川を流す」ような行為。流れが生まれると、心は軽く、人生は静かに動き始めます。
チネイザンの起源と歴史 — 古代タオからチェンマイへ受け継がれた“氣の智慧”



ここまでお読みいただきありがとうございます。チネイザンをもっと知りたいと思った方のために、チネイザンの設立と歴史について解説していきます。
古代中国〜タイ北部での継承:氣の智慧が生き続ける道
チネイザンのルーツは、約2,500年前の古代中国・道教(タオ)哲学にあります。
当時の修行者たちは、瞑想・氣功・呼吸法と並んで、
「内臓を手で整える=内なる氣功」を行い、心身のバランスを取っていました。
彼らにとって臓器は単なる器官ではなく、感情と魂が宿る場所。
怒りは肝に、不安は脾に、悲しみは肺に、恐れは腎に宿ると信じられていました。
この思想が、チネイザンの「感情をお腹から癒す」というルーツとなっています。
タオ哲学がタイ北部・チェンマイに渡るまで
時代が進むと、タオの智慧はシルクロードを通じて東南アジアへと伝わり、タイ北部・チェンマイの山岳地帯で受け継がれました。
この地では、タイ伝統医学やハーブ療法、古式マッサージ(Nuad Thai)と融合。
チネイザンはより身体的で実践的なヒーリングとして進化し、「氣の流れ」と「身体の流れ」を結ぶセラピーへと形を変えていきます。
マスター・マンタック・チアと現代チネイザンの誕生
1970年代、タイ北部のタオの教えを現代に再構築したのが、
マスター・マンタック・チア(Mantak Chia)です。
彼はタオガーデン(Tao Garden)を設立し、
チネイザンを「体内の氣を循環させ、内臓に蓄積した負の感情を解放するメソッド」として体系化しました。
現在もチェンマイ郊外にあるタオガーデンは、世界中のチネイザンセラピストが集う“氣の聖地”として知られています。
クンジーとクンニー 女性性のチネイザンを広めた継承者たち
クンジー(Koon Ji)は、呼吸とタッチを融合させた繊細な施術で知られ、まるで“お腹の中に眠る感情の記憶”を優しくほどいていくようなセッションを行いました。
一方、クンニー(Koon Ni)は、伝統的なタオの手法をベースにしながら、「内臓は心の地図」という教えを伝え続けた実践家であり、彼女のスクールには世界中からセラピストが学びに訪れました。
残念ながら、お二人ともすでにこの世を去られました。
けれど、その教えとスピリットは今も多くの弟子たちの手と心に息づき、チネイザンという癒しの技術を通して、世界中で生き続けています。
この二人の存在によって、チネイザンは“男性的な氣功”から、“女性的で感情に寄り添うヒーリング”へと進化しました。



私が訪れたchi chaiマッサージのchaiさんは、クンニーさんの元でチネイザンを学ばれたそうです。
まとめ|“お腹から癒す”という、新しい旅のかたち
チネイザンは、単なるマッサージではありません。
それは、お腹という心の奥深くに触れるセラピーです。
お腹を押されると、最初は少し痛みを感じます。
でもその痛みの中に、確かに“ほぐれていく感情”がありました。
私の場合は、いつの間にか押し込めていた思いが静かに浮かび上がり、「ああ、私の中にこんな感情がおしこめられていたんだ」と気づく時間になりました。
チネイザンは、内臓を整えることで心を整える。考えすぎる頭から、感じる身体へ。そんなスイッチを入れてくれる体験です。
チェンマイには、熟練したセラピストが多く、どのサロンにも「静かな気づき」と「深い安心感」が流れています。
もし心や身体に小さな詰まりを感じているなら、
次の旅では“お腹から癒す”時間を、自分にプレゼントしてみてください。
